錦糸町マルイ教室
柳 秀三 さん
3479 たぬきがいる
2024年01月23日 14:20

お昼前、ご近所ローソンに買い物に行くことにした。
重くなるので、車で行くことにした。
駐車場まで歩いていると、前方にいる犬を連れたおじさん(俺もおじさんだが、もっと先輩)が話しかけてくる。
知らない人なので、俺だとは思わなかった。
でも、近づくと明らかに俺に話しかけている。
「たぬきがいる!たぬきがいるんだよ!」
わが街は完全に住宅街。
町内にあった雑木林も住宅に変わり、たぬきが棲息できそうなところはない。
それでも、わが家の近所で 10年以上前早朝にたぬきを見かけたことはあった。
だから、おじさん、たぬきごときでなに興奮してるんだよと思った。
おじさんが指さす方を見れば、一軒のお宅の玄関先に、それはいた。(写真)
うん、確かにたぬきだ。
毛が抜けてしまったのか、弛んだ地肌が見える。
いまの季節は毛がふさふさして丸々としているのが本来だろうに。
おじさんと俺とほかにもベビーカーを押すママさん、数人に見られても、体力がないのか動かないでいる。
身じろぎもしない。
空腹で動けないのかもしれない。
おじさんのひとりが言った。
「あそこの古い家を取り壊したから、そこから逃げてきたんじゃない?」
数百m先に古い家があり木々がうっそうとしていたのだが、取り壊されて更地になっている。
なので、こちらのおじさん(俺)も負けじと興奮してみせた。
「そうですね、たぶんあそこにいたんですね」
人間たちは、もう喧々諤々(けんけんがくがく)である。
けものは、その間もジッとしている。
動けないのは明らかだ。
「かわいそう」
みんなそう思っている、ぜったい。
でも、どうしようもない。
犬・猫じゃない野生のたぬきの成獣である、そして、他人様の敷地の中のこと。
誰かひとりなら、なかには行動に移す者もいたかもしれない。
大勢がいるので、かえって行動に移しづらい。
誰かがなんとかするだろう…。
ひとり散り、ふたり散り、俺も車に乗り込んだ。
ローソンから帰ってきてもまだ、犬を連れたおじさんはいて、そのお宅の女性と話をしていた。
たぬきはもういなかった。
柳 秀三
重くなるので、車で行くことにした。
駐車場まで歩いていると、前方にいる犬を連れたおじさん(俺もおじさんだが、もっと先輩)が話しかけてくる。
知らない人なので、俺だとは思わなかった。
でも、近づくと明らかに俺に話しかけている。
「たぬきがいる!たぬきがいるんだよ!」
わが街は完全に住宅街。
町内にあった雑木林も住宅に変わり、たぬきが棲息できそうなところはない。
それでも、わが家の近所で 10年以上前早朝にたぬきを見かけたことはあった。
だから、おじさん、たぬきごときでなに興奮してるんだよと思った。
おじさんが指さす方を見れば、一軒のお宅の玄関先に、それはいた。(写真)
うん、確かにたぬきだ。
毛が抜けてしまったのか、弛んだ地肌が見える。
いまの季節は毛がふさふさして丸々としているのが本来だろうに。
おじさんと俺とほかにもベビーカーを押すママさん、数人に見られても、体力がないのか動かないでいる。
身じろぎもしない。
空腹で動けないのかもしれない。
おじさんのひとりが言った。
「あそこの古い家を取り壊したから、そこから逃げてきたんじゃない?」
数百m先に古い家があり木々がうっそうとしていたのだが、取り壊されて更地になっている。
なので、こちらのおじさん(俺)も負けじと興奮してみせた。
「そうですね、たぶんあそこにいたんですね」
人間たちは、もう喧々諤々(けんけんがくがく)である。
けものは、その間もジッとしている。
動けないのは明らかだ。
「かわいそう」
みんなそう思っている、ぜったい。
でも、どうしようもない。
犬・猫じゃない野生のたぬきの成獣である、そして、他人様の敷地の中のこと。
誰かひとりなら、なかには行動に移す者もいたかもしれない。
大勢がいるので、かえって行動に移しづらい。
誰かがなんとかするだろう…。
ひとり散り、ふたり散り、俺も車に乗り込んだ。
ローソンから帰ってきてもまだ、犬を連れたおじさんはいて、そのお宅の女性と話をしていた。
たぬきはもういなかった。
柳 秀三
記録
かわいそうである。
ヒトみたいな表情は、もちろんない。
でも困っているのはわかる。
全身がそれを表している。
写真なんか撮らなければよかった。
柳 秀三
かわいそうである。
ヒトみたいな表情は、もちろんない。
でも困っているのはわかる。
全身がそれを表している。
写真なんか撮らなければよかった。
柳 秀三
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