錦糸町マルイ教室
柳 秀三 さん
1995 下町探偵局
2021年03月29日 17:40
すぐポケットから文庫本を取り出す。岩波の三つ星で、表紙がもう手ずれして薄黒くなっている。
フレイザーの金枝篇の第三巻目である。それは全部で五巻あり、五巻ともデスクの抽斗に突っ込んであって、電車に乗るような時、適当にその中の一冊を取り出してポケットに入れるのであった。
昔はかなりの読書家で、いろいろな本を読んだが、近頃は金枝篇だけだ。どこから読んでも面白いし、どこでやめてもかまわないところがある本だった。何度同じくだりを読んでも、それなりに得るものがあって、本はもうこれだけで充分だと思っているらしい。
(角川文庫 半村良 下町探偵局PART1 第二話 秋の鶯 115ページ)
半村良は俺の好きな作家のひとりである。
この「下町探偵局PART1」は、奥付に昭和五十九年五月二十九日 初版発行とあるので、俺が二十歳前後のときに購入して読んだ作品である。
冒頭に記した「フレイザーの金枝篇」の部分は、この物語の主人公下町誠一のことである。
これを読んだ二十歳の俺は、「かっちょええ!」と思った。
タイトルが「下町探偵局」で、主人公は中年の探偵事務所の所長である。
探偵ものではあるが、舞台は東京下町、中身は落語の人情噺のようである。
「適当にその中の一冊を取り出してポケットに入れるのであった。・・・どこから読んでも面白いし、どこでやめてもかまわないところがある本だった。」
本好きの俺のハートを射止めた、この一節。
俺も、この「フレイザーの金枝篇」のような一冊が欲しい。
若い頃は、物語はなるべく長いほうが良かった。
尽きないお話、終わらない物語を欲した。
近頃は違う。
一冊あるいは二冊の連作集があればいいなと思う。
もちろん、「どこから読んでも面白いし、どこでやめてもかまわない」本がいい。
それもあって、昨日、詩集「月に吠える」をアマゾンで購入したのだ。
カフェで、ジーパンの尻ポケットに無造作に突っ込んだ「月に吠える」を開いて、コーヒーを一口すする。
かっちょええ!
ああ、自己満足の世界。
しかし、萩原朔太郎の「月に吠える」が、俺にとってのフレイザーの「金枝篇」であるかどうかは、まだわからない。
半村良さん、ありがとうございます。
柳 秀三
フレイザーの金枝篇の第三巻目である。それは全部で五巻あり、五巻ともデスクの抽斗に突っ込んであって、電車に乗るような時、適当にその中の一冊を取り出してポケットに入れるのであった。
昔はかなりの読書家で、いろいろな本を読んだが、近頃は金枝篇だけだ。どこから読んでも面白いし、どこでやめてもかまわないところがある本だった。何度同じくだりを読んでも、それなりに得るものがあって、本はもうこれだけで充分だと思っているらしい。
(角川文庫 半村良 下町探偵局PART1 第二話 秋の鶯 115ページ)
半村良は俺の好きな作家のひとりである。
この「下町探偵局PART1」は、奥付に昭和五十九年五月二十九日 初版発行とあるので、俺が二十歳前後のときに購入して読んだ作品である。
冒頭に記した「フレイザーの金枝篇」の部分は、この物語の主人公下町誠一のことである。
これを読んだ二十歳の俺は、「かっちょええ!」と思った。
タイトルが「下町探偵局」で、主人公は中年の探偵事務所の所長である。
探偵ものではあるが、舞台は東京下町、中身は落語の人情噺のようである。
「適当にその中の一冊を取り出してポケットに入れるのであった。・・・どこから読んでも面白いし、どこでやめてもかまわないところがある本だった。」
本好きの俺のハートを射止めた、この一節。
俺も、この「フレイザーの金枝篇」のような一冊が欲しい。
若い頃は、物語はなるべく長いほうが良かった。
尽きないお話、終わらない物語を欲した。
近頃は違う。
一冊あるいは二冊の連作集があればいいなと思う。
もちろん、「どこから読んでも面白いし、どこでやめてもかまわない」本がいい。
それもあって、昨日、詩集「月に吠える」をアマゾンで購入したのだ。
カフェで、ジーパンの尻ポケットに無造作に突っ込んだ「月に吠える」を開いて、コーヒーを一口すする。
かっちょええ!
ああ、自己満足の世界。
しかし、萩原朔太郎の「月に吠える」が、俺にとってのフレイザーの「金枝篇」であるかどうかは、まだわからない。
半村良さん、ありがとうございます。
柳 秀三
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