錦糸町マルイ教室
柳 秀三 さん
0856 高浜五郎⑥
2019年05月26日 01:11
工場長というのは関内運送が専属で入っている工場の工場長で、関内運送の仕事の99%がこの工場の品物の配達である。もし、五郎がこの工場に出入りできないのなら、ドライバーとしての仕事など無いに等しい。高浜五郎は関内運送に居場所が無くなる。
後日、五郎は会社に顔を出した。
『一度脳出血を起こした人間はまたなる、その人間に仕事を預けられない、うちには入れさせない、って言うんですよ、頭きますよー』
五郎の後輩で、糖尿病の配車係藤木に替わって配車を任された六田が憤慨したように言う。
『俺だって、誰だって、明日どうなるかなんて、わかんねえ!なんでそれがアイツにわかるっつうんだよなあ!』
後輩だが、五郎より10歳も年長のトラックドライバー鈴井は特に工場長のことが嫌いだ。
驚きはしたが、入院中から居場所が無くなることに予感はあった。そして、実を言えばあの工場には戻りたくなかった。運送の素人の工場長が全てを決め、プロである五郎たちや、もうひとつの専属の運送会社である合同陸運のドライバーの言う事を聞かない。ルールを独り決めにする。汗水流す労働は五郎も望むところだが、工場長にはもうウンザリだった。
仲間のドライバーは大好きだったのだが、工場が嫌だった。
しかし、工場に戻りたくないという気持ちは同僚たちには言わないでおいた。
関内運送、合同陸運ともに工場の事務所にデスクを借り、両社の配車係が一日中詰めている。関内運送では配車係藤木の後継者問題があり、いまはもう一番の古株になってしまった五郎の名も挙がってはいたのだが、五郎は事務所に入って工場長と毎日ツラを突き合わせるのは嫌だった。結局、自分からやりたいと言った六田がすでに配車係見習いとなっていた。
工場長の言ったことは絶対であるが、もしも、配車係の交代時機がもう少し後にずれていれば、たとえドライバーとして工場長に拒否をされたとしても、五郎がトレーラーを運転しない配車係としてなら残ることはできたはずだ。しかし、六田が配車係と決まった以上、『お前はどけ俺が配車をやる』とは言えるはずもない。
だから、五郎の失職は決定的と言えた。
柳 秀三
後日、五郎は会社に顔を出した。
『一度脳出血を起こした人間はまたなる、その人間に仕事を預けられない、うちには入れさせない、って言うんですよ、頭きますよー』
五郎の後輩で、糖尿病の配車係藤木に替わって配車を任された六田が憤慨したように言う。
『俺だって、誰だって、明日どうなるかなんて、わかんねえ!なんでそれがアイツにわかるっつうんだよなあ!』
後輩だが、五郎より10歳も年長のトラックドライバー鈴井は特に工場長のことが嫌いだ。
驚きはしたが、入院中から居場所が無くなることに予感はあった。そして、実を言えばあの工場には戻りたくなかった。運送の素人の工場長が全てを決め、プロである五郎たちや、もうひとつの専属の運送会社である合同陸運のドライバーの言う事を聞かない。ルールを独り決めにする。汗水流す労働は五郎も望むところだが、工場長にはもうウンザリだった。
仲間のドライバーは大好きだったのだが、工場が嫌だった。
しかし、工場に戻りたくないという気持ちは同僚たちには言わないでおいた。
関内運送、合同陸運ともに工場の事務所にデスクを借り、両社の配車係が一日中詰めている。関内運送では配車係藤木の後継者問題があり、いまはもう一番の古株になってしまった五郎の名も挙がってはいたのだが、五郎は事務所に入って工場長と毎日ツラを突き合わせるのは嫌だった。結局、自分からやりたいと言った六田がすでに配車係見習いとなっていた。
工場長の言ったことは絶対であるが、もしも、配車係の交代時機がもう少し後にずれていれば、たとえドライバーとして工場長に拒否をされたとしても、五郎がトレーラーを運転しない配車係としてなら残ることはできたはずだ。しかし、六田が配車係と決まった以上、『お前はどけ俺が配車をやる』とは言えるはずもない。
だから、五郎の失職は決定的と言えた。
柳 秀三
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