パソコン市民講座 プレミア倶楽部
パソコン市民講座 プレミア倶楽部  会員専用「プレミアブログ」
  •  「プレミア倶楽部」会員の一般公開ブログです。
  • 会員の方はログインしてください。
    • 3506 カキっ放し!!
    • 3505 note(ノート)⑦
    • 3504 表示されない
    • 3503 note(ノート)⑥
    • 3502 へぇ~、そう
    • 「あけちゃん」さん より
    • 「あけちゃん」さん より
    • 「あけちゃん」さん より
    • 「あけちゃん」さん より
    • 「あけちゃん」さん より

カキっ放し!!

 錦糸町マルイ教室  柳 秀三 さん

0852 高浜五郎②

 2019年05月25日 23:59
 電話の向こうで鈴井たちの慌てる声が聞こえるが、高浜五郎はソフトバンクのケータイを切った。

 制服の作業着の胸ポケットにauのスマートフォンを落とし込み、履いていたクロックスサンダルを脱いで、安全靴に半分足を突っ込んだ。ドアを開けてトラクター(トレーラーヘッド)のキャビンを降りた。救急車を呼ぶ前に、宮川を起こして自分のトレーラーの荷下ろしを、一言頼んでおかなければならない。

 そして、地面に降り立ったところでミスを悟った。すでに体が自由にならない状態になっていたのだ。五郎は立っていられなかった。めまいとか嘔吐とかではない、立って歩くことを体が拒否している。宮川のトラクター(トレーラーヘッド)のキャビンのドアを叩いて起こすつもりだったが、宮川のトラクターを回り込んで運転席側に歩いていくことはもはや不可能だ。

 もう、宮川を起こすどころではない、倒れてしまわないようにするのが精いっぱい、まるで、壊れたロボットみたいだ。運転席にも戻れない、大型トラックの運転席の位置は高く、キャビンの床が目の高さにある。自分の体を運転席に押し上げることは到底できない。

 ともかく救急車だ!

 スマートフォンを胸のポケットから取り出し、電話アプリをタップし、119をタップした。

 自分がその当人だが、脳梗塞の恐れがあるので、救急車をお願いすると話をし、氏名と工場名までは言ったものの、スマートフォンの画面に触れてしまい、電話が切れた。再度かけようとするが、左手がスマートフォンをまともにホールドできない。

『くそっ!』

 動いた拍子に五郎はよろけた。工場の鉄製の門扉にぶつかり、崩れ落ち、アスファルトに仰向けに横になった。起き上がろうとするが上半身も起こせない。安全靴が脱げてしまっている。地面でもがいていると、宮川がキャビンから降りてくるのが見えた。

『寝てろ!いいから寝てろ!』

 宮川が119をコールし、救急車が到着した。

 五郎は死を感じなかった。ただ、嘔吐感が激しく、ひたすら救急隊員の持つビニール袋に吐き出そうとしていた。だが、何も出ず、目から涙だけがポロポロと出た。宮川に私物のバッグとスマートフォンを救急車に乗せてくれと頼んだのが、最後の記憶だった。

柳 秀三 
コメント
 0 件
コメントがありません。
利用規約 プライバシーポリシー 運営会社情報 © 2010 - 2025 パソコン市民講座