カキっ放し!!　105

わが家は北西の角地である。

北面道路に面した右隣の家と、わが家と、西面道路に面した左隣の家と、三軒分の敷地にもとはアパートが一軒建っていたらしい。

右隣の家を仮にＡ家とすると、現在Ａ家のみが賃貸住宅。

わが家と西面の左隣のＢ家は、３０年以上変わらず住む家である。

Ａ家にはいぜん持ち主が住んでいたのだが、家庭の事情で埼玉に引っ越し、もう戻ることは無いとのこと。

戻らないのだから売ればいいのにと思うが、賃貸住宅にして他人に貸している。

管理は不動産会社任せだから、どんな人間が住んでいるか関知しない。

借り主はもう何回変わったかわからない。

引っ越してきてきちんと挨拶する方もいれば、名前すらわからないこともある。

まあ、どうせ長くないだろうからほおっておいても良いだろうと思うのだが、ごみ収集の問題があるので、そうもいかない。

お隣であるわが家の方から訪ねていき、名前を聞いてあげて、ごみ集積所の場所を教え、ごみ当番表を渡し、よろしくねと挨拶する。

逆だろうと思うが、世代的にいつもＡ家の方が若く、価値観も相当違うだろうと思われ、他人があーだこーだ言うとトラブルの元となる可能性大なので、こちらが大人になるしかないといった感じか。

その時期であれば、町会費も徴収する。

お互いに、深入りするつもりはないので、これでいいと思っていた。



ところが、本年度我が家は組長、いや、俺が組長。

組長とは、丁目、班の下にある組(１０余軒)で持ち廻りし、およそ６～７年で廻ってくる言わば雑用係。

なのだが、去年度の組長と上位である班長とその他で来年度から(つまり本年度)、Ａ家を町会会員から外そうと決めたらしい。

俺はその場にいなかったが班長が知っているならそれで良いのだろうぐらいにしか思わなかった。

そうなるにはそれなりのゴタゴタは確かにあった。

いま住んでいる人がどうのこうのだけでなく、もう十何年もの間の懸案だった。

なので、Ａ家と、高齢者になった１軒、空き家になった１軒、計３軒の会員の名簿からの削除が俺の最初の仕事になった。

つづく

柳 秀三